2013年8月31日土曜日

アンダーグラウンドギョーダに原稿を掲載してもらったよ◎

地元の若いアーティストさんが完全DIYで発行しているフリーペーパー”アンダーグラウンドギョーダ”に「SEEDからbug-depayse舞台公演「ストーン・サークル」までのこと」というコラムを掲載していただきました。
せっかくなのでこちらにも載せます!
長いです。しかし、これを読めばSEEDの全貌が見えてくる!
お暇なときにでも、ぞうぞ!



SEEDからbug-depayse舞台作品「ストーン・サークル」公演までのこと



 去年の9月から10月にかけて開催した地元の若者たちとの演劇ワークショップ公演企画「SEED」は私にとって新しい試みであり、その後の活動に新しい指針を提示してくれた意義深い機会でした。
 このSEEDで出会った若者の1人に高橋大樹さんがいました。彼は行田進修館高校卒業後、地元の会社に就職し、電気基盤などの製作工場で働いていました。高校1年のときに怪我が原因で野球部から演劇部に移り、とりあえず出演してみた舞台で演劇の魅力に取り付かれ、以降精力的に活動するものの、高校卒業後は演劇活動をするための場所も仲間も見つからず、いつかまたやりたいという漠然とした気持ちを内に秘めながら日々仕事に行く、という生活をしていたといいます。
 SEEDの総合演出を担当してもらった宗方勝(bug-depayse主宰)さんは、早くから高橋さんの役者としての魅力に気付いていたそうです。参加希望者の初顔合わせのときに高橋さんの一種女性的ともいえる柔らかい身のこなし方に興味を引かれたと言っていました。
 高橋さんはSEEDのワークショップと公演において重要な役割を担い、苦心しながらもそれをこなし、参加者たちの中心的な存在として、私と宗方さんとともにこの企画を牽引してくれました。
 このワークショップ公演企画終了後、私と宗方さんと高橋さんは3人で話し合い、その後も継続的にこの地域での演劇ワークショップ企画を開催していくことを決めました。その動機は3人それぞれ別々のところもあるし、重なっている部分もありました。私は演劇に限らず広く様々な分野の表現活動を自分が生まれ育ち現在も生活している行田に根付かせたいと思っていました。地元の若者たちとの演劇を通じた日常的なコミュニケーションというものは自分のその目標にとってとても大きな意味があると考えました。宗方さんの場合は作品を作る演出家・表現者の立場から、地方の若者たちとの共同創作によって得られる知見の興味深さと、若者を育てるという自身の意識、それから自身の創作活動に通底する社会に対する問題意識などに因っているようでした。高橋さんは演劇というものに対する熱意と愛情、それとこれまで演劇をやる環境がなかった場所に演劇をやる機会を生んでいくことへの意欲などに動かさせているようでした。演劇とは何か、表現とは何か、といった点で議論が深まっていくと皆それぞれ異なる考えを持っていましたが、行田には文化的な物事が少なすぎる、ということについては完全に一致していました。
 2013年1月から、私たちは毎月1回定期的にSEED演劇ワークショップを開催する活動を始めました。参加者が少なくても、とにかく毎月1回定期的に開催していくことでこの活動をこの地域に根ざしたものへと育てていく、同時に参加者も徐々に増やして活動の幅を広げていく、そんなことを考えていました。
 はじめは参加者が2人だけだったり、公民館の予約が上手い具合に取れなかったり、難しいところがぽつりぽつりありましたが、3人の立場と経験と知識を総動員して、いろいろと改善策を打っていきながらどうにかこうにか毎月1回開催することができました。毎月近隣の高校の演劇部の顧問にお知らせのチラシを手渡しに行ったり、私たちの活動を理解して応援してくれるお店にチラシを置かせてもらったり、ワークショップに参加してくれた方へこまめにお知らせを送ったり、ブログで関連情報を発信したり、毎回ワークショップの振り返りを行いそれを撮影してSEEDTVとしてYouTubeで公開したり、予算等は初めから無い中でいろいろと工夫を凝らしながら、DIYな活動を展開していきました。努力の甲斐もあってか、だんだんと参加者も増えてきて、毎月多少の増減はありますがだいたい10名くらいは集まってワークショップが開催できるようになりました。
 そんな中、今年の5月頃に宗方さんから自らの主宰団体であるbug-depayseの舞台作品の公演を行田の牧禎舎で行いたいという提案がありました。私の石を使ったパフォーマンスアート作品に着想を得た舞台作品で、牧禎舎を公演会場として使用したいということでした。私は少し迷いました。bug-depayseの作品は芸術の概念のもとに制作される作品であり、SEEDが標榜していた高校演劇とは舞台作品であるという点でこそ類似していますが、その内容は全く異なるものです。芸術の概念がほとんど浸透していないように見えるこの地域でそういう作品の公演が成立し得るのか、そもそも出演者として参加してもらう地元の若者たちにすら理解され得ないのではないかと思ったからです。しかし私は元来楽天的な性格の人間でもあり、宗方さんや高橋さんといろいろ話すうちに、自分の中にある迷いよりも、目を細めた先にちらほらと見えるような気がする可能性のほうを目指して歩いてみたくなりました。振り返ってみれば、高橋さんと出会うきっかけになった昨年のSEEDワークショップ公演も、それを企画するきっかけになった本町のパン屋さん「翠玉堂」での毎月のパフォーマンスイベントも、それ以前に企画していたパフォーマンスアートのフェッスティバルも、6年前にbug-depayse主催のイベントに出演者として参加して宗方さんと出会ったことも、どれもこれもちらほらとみえるような可能性のほうに向かって歩いてみたらぶつかって生まれた物事です。そうやって歩いて、そうやって生まれてきた物事の数々の中に、後悔を感じるものは今のところ一つもありませんでした。
 7月からbug-depayseの新作「ストーン・サークル」の稽古が始まりました。作品の内容は行田という地域の芸術への理解度などには全く遠慮しない、これまでのbug-depayse作品同様非常に抽象的で芸術的なものとなりました。逆にキャスト、制作陣は稽古も本番もすべて行田で行うという物理的な制限もあって私のこれまでの活動を反映した顔ぶれとなりました。
 キャストは私と高橋さんを含め7名です。野澤健さんはbug-depayseのメンバーとして6年前から数々の作品をともに作ってきた仲間であり同志です。彼は今年の4月に地元である群馬県前橋市から行田に移住し、現在は行田に本拠地のある障害者支援団体ひこうせんで働きながら、都内で行われる舞台作品への出演なども行っています。身障者でもある彼は共演する地元の若者たちにとってとても刺激的かつ教育的な存在でもあります。今作の終了後すぐに横浜での唐ゼミ作品への出演が控えています。江積志織さんは浦和を拠点に活動するダンサーです。日本におけるモダンバレエ、モダンダンスの草分け的な存在であった故・藤井公、藤井利子、上原尚美に幼少より師事し、数々の作品に出演。舞踊コンクールでの受賞歴も多数あります。2010年に埼玉県舞踊協会とSMF(Saitama Muse Forum)共催のコレオグラファーの目(「夜会」)というイベントで共演して以来いくつかのイベントで共演させていただき、今回も出演していただくことになりました。今後、江積さんによる行田でのダンスワークショップの開催なども計画中です。安達美和さんは小学校の同級生で、最近になって彼女が演劇をやっていたことを知り、SEEDワークショップをきっかけに再会し、今作にも出演してもらうことになりました。早稲田大学を卒業後、自ら劇団を立ち上げて活動した経験をもち、現在は「布の力 久磨衣」の社員として全国の旅館の経営コンサルタントとして活躍しながら、自身の活動として小説やエッセイの執筆も行っています。長谷川礼太さんは高橋さんの同級生で進修館高校演劇部で演劇をやっていました。卒業後は地元の印刷会社へ就職し、非常に厳しい労働環境の中で働いていましたが、現在はその職を辞し、新しい仕事を探しているそうです。長谷川さんも昨年のSEEDの際に参加希望者として知り合いましたが仕事との折り合いがつかず、参加を断念せざるを得ませんでした。舞台に立ったときに現代の若者を象徴するような雰囲気を匂わせる独特の存在感があり、今後の活躍も期待される19歳です。清水崇弘さんは高橋・長谷川よりも5歳ほど年上で彼らにとって進修館高校演劇部の先輩にあたります。卒業後は大学へ進学し、その後電気通信関係の会社に就職、現在も社員として働いています。SEEDワークショップに参加してもらったのをきっかけに知り合い、今作にも出演してもらうことになりました。今回の作品では自らの身体に故意に負荷をかけるパフォーマンスアート的な表現にも挑戦してもらっています。
 制作陣では作・演出の宗方さんのほか、4名の作家に参加してもらっています。音響を担当してもらっているのは本木克昌さん。ノイズを中心にハードコアでフェティッシュな音楽を生み出すユニットABISYEIKAH(アビシェイカー)のメンバーとして精力的に活動し、各方面から評価を得ている表現者です。一見悪ふざけや悪ノリにも見える原初的なパフォーマンスから繊細で緻密な音響表現まで、とても幅広い表現活動を行っています。本木さんは群馬県伊勢崎市在住で、パン屋にもよく遊びにきて実験的なライブ演奏を試みてくれます。舞台作品の音響は自身にとって初めてのことだそうで、bug-depayseの作品とどんな化学反応を起こしてくれるのか、非常に楽しみです。美術を担当してもらう鈴木道夫さんは羽生市に工房を開いている藍染作家です。翠玉堂の平川さんを介して知り合って以来、いろいろな面で大変お世話になっている方です。鈴木さんはこの地域の芸術文化活動従事者にとっての精神的な支柱だと言っても過言ではないと思います。60歳を超える年齢を全く感じさせない思考の柔軟さと奔放さには、いつも勇気づけられます。鈴木さんとは今後もっともっといろいろな取り組みで協働していきたいと考えています。今回どんな作品を舞台美術として制作してくれるのか、期待が高まります。舞台スタッフを担当してもらうのは土田秀吾さんと五十嵐純さん。土田さんは宗方さんの古くからの友人であり、これまでのbug-depayseの作品のほとんどすべてに関わっています。自身は彫刻家であり、現在は鉄を使った家具の作家として生計を立てています。美術家としての創造性を持ちながら宗方さんの要望をきっちりと具現化してくれる非常に心強い存在です。五十嵐さんは私と同い年で行田在住の美術家です。多摩美術大学の油画科を卒業後、様々な展覧会での作品発表やグループ展の企画、国際展の運営スタッフ、NYのギャラリースタッフなど、様々な形態で美術に携わってきました。地元では数少ない美術仲間として、知り合ってから今までお互いにいろいろな企画で協力し合ってきました。今後もこの地域の芸術文化活動の同世代の担い手として協働していきたいと思います。
 その他にも、昨年のSEEDから記録担当として関わっていただいている共同アドバンスの西田典正さんや、フライヤーをデザインしていただいた大谷美咲さんなど、多くの地元の方々の協力を得て、今回のbug-depayse作品「ストーン・サークル」は動き出しています。
 公演は9月14日(土)、15日(日)の二日間開催します。今回は昼と夕方の一日2回、全部で4回公演を行いますが、その全ての回の公演終了後にアフタートーク、またはアコースティックバンドのライブ演奏を行います。トークのゲストには早稲田大学哲学科教授の鹿島徹さん、写真批評家の大嶋浩さんがご来場されます。バンド演奏のゲストにはTHE登竜門ストぱふぉ部門グランプリ受賞のアコースティックバンドASKが登場します。どの回に誰が登場するかは下記公演詳細をご覧になってください。
 今回の作品がどういった評価を受けるのか。観た人の心に何を残すのか。不安と期待が入り交じった気持ちで稽古に打ち込んでいます。たくさんの方々に観に来ていただきたい作品です。ぜひ、劇場に足をお運びください。関係者一同、お待ちしています。
野本翔平(bug-depayse / SEED)


2013年8月11日日曜日

SEEDTV #7




★SeedTV★
SEEDWSシリーズ企画・制作を担当する
高橋大樹・野本翔平
の二人がメインパーソナリティーとして
SEEDファンの皆様に送る番組。
不定期で収録・放送。

<今回の内容>
・菅谷さん紹介
・第7回ワークショップ振り返り
・次回ワークショップのお知らせ
ゲスト:菅谷さん